男性の育休取得者の割合は6.16%で上昇推移、2018年度調査

厚生労働省は2019年6月4日、「平成30年度雇用均等基本調査(速報版)」の結果を取りまとめ公表しました。
「雇用均等基本調査」は、男女の雇用均等問題に関わる雇用管理の実態把握を目的に、毎年実施しています。
今回発表された速報版では、育児休業取得者割合に関する調査項目について取りまとめています。業種(産業)により育休などの働く人の権利の行使が難しいという差は大きく、今回業種ごとの統計も掲載されていたため、前年度の育休取得率調査と合わせて育休取得率の推移についても表を用いて紹介します。

男性の育児休業取得者の割合は6.16%(平成30年度調査結果)

平成28年10月1日から平成29年9月30日までの1年間に配偶者が出産した男性のうち、平成30年10月1日までに育児休業を開始したもの(育児休業の申し出をしている者を含む)の割合は、6.16%で、前回調査(平成29年度調査5.14%)より1.02%上昇しました。

女性の育児休業取得者の割合は82.2%(平成30年度調査結果)

平成28年10月1日から平成29年9月30日までの1年間に在職中に出産した女性のうち、平成30年10月1日までに育児休業を開始した物(育児休業の申し出をしている者を含む)の割合は、82.2%となり、前回調査(平成29年度調査83.2%)より、1.0%低下しました。

男性育休取得率の推移(平成30年度と平成29年度の比較)

男性の育休の取得は、金融業、保険業、宿泊業、飲食サービス業、不動産業、物品賃貸業などの業種で比較的高い取得率となっています。

男性の育休取得割合の推移
H29年度 H30年度
総 数 5.14% 6.16%
産 業
鉱業,採石業,砂利採取業 2.41% 13.94%
建設業 3.96% 3.34%
製造業 3.98% 4.30%
電気・ガス・熱供給・水道業 3.74% 14.51%
情報通信業 12.78% 10.09%
運輸業,郵便業 2.25% 4.04%
卸売業,小売業 4.08% 5.08%
金融業,保険業 15.76% 18.69%
不動産業,物品賃貸業 6.09% 11.57%
学術研究,専門・技術サービス業 7.48% 5.67%
宿泊業,飲食サービス業 7.25% 19.92%
生活関連サービス業,娯楽業 1.19% 7.18%
教育,学習支援業 4.65% 1.89%
医療,福祉 3.65% 6.86%
複合サービス事業 6.79% 6.47%
サービス業(他に分類されないもの) 1.82% 4.43%

女性育休取得率の推移(平成30年度と平成29年度の比較)

女性の育休の取得割合は男性と比較すると高い水準にあります。女性の場合には産前産後休業があり、その後に育児休業を取得するかという選択になります。

女性の場合、産前産後休業を取得することは必然的なもののため、その後スムーズに育児休業に入ることができているものと考えられます。ただし、育児休業は職場への復帰を前提とした制度であるため、この制度の趣旨を極論のように扱い「職場に戻る可能性がはどうせないのだから退職せよ」というプレッシャーをかけるマタニティーハラスメント(マタハラ)などのケースもまだまだあるようです。マタニティーハラスメントについては「マタハラ・妊娠による不当解雇 厚労省初の事業所公表に」の記事で詳しく紹介しています。

女性の育休取得割合の推移
H29年度 H30年度
総 数 83.20% 82.20%
産 業
鉱業,採石業,砂利採取業 100.00% 53.00%
建設業 88.60% 59.10%
製造業 75.10% 86.80%
電気・ガス・熱供給・水道業 88.90% 100.00%
情報通信業 95.50% 89.60%
運輸業,郵便業 98.60% 59.70%
卸売業,小売業 77.60% 83.10%
金融業,保険業 97.60% 88.40%
不動産業,物品賃貸業 78.20% 99.20%
学術研究,専門・技術サービス業 89.60% 92.90%
宿泊業,飲食サービス業 87.00% 61.10%
生活関連サービス業,娯楽業 73.10% 66.80%
教育,学習支援業 84.30% 80.20%
医療,福祉 84.70% 89.30%
複合サービス事業 81.70% 97.20%
サービス業(他に分類されないもの) 88.70% 75.40%

育休中の手当、育児休業給付金など

男性でも女性でも、育児休業を取得すると働いていない間の給与は原則なくなってしまいます。その補助をするために、育休中に利用できる制度がいくつかあります。

これらは基本的には雇用主(会社)が手続きするもので、事前に会社との相談が必要になります。おそらくこのあたりが最も男性の育児休業が進みにくいところで、会社に余計な仕事をさせる上に、補助金までもらうなんて・・・という気持ちが強くなるのではないかと思います。しかし、そんなことは気にせず、権利は権利ですし、新しく生まれてくる子の父親はあなた一人、子どもが小さいときは本当に愛おしく、そして大変なのでしっかり体感することが、その後の人の心がわかる世代になっていくと思います。

給与の67%を支給する育児休業給付金

育児休業給付金が申請できるのが生まれてから1歳未満の子供がいる間(条件が揃えば2年まで延長可能)で、雇用保険に加入しており、育休前の2年間で、1ヶ月に11日以上働いた月が12カ月以上ある人が対象です。

1ヶ月あたりに受け取れる育児休業給付金の支給額の計算は 労働者の育児休業開始時賃金日額×支給日数(通常30日)の67% (出産から6ヶ月経過後は50%)となります。

育休中は健康保険と厚生年金の保険料は被保険者分・事業主分とも免除

育休中は、基本的に産休・育休ともに休業の「開始月」から「終了前月」までが社会保険料免除の対象となります。

社会保険料(健康保険と厚生年金)の免除を受けている期間も被保険者としての資格は継続し、将来、年金額を計算する際には保険料を納めた期間として扱われます

男性の育休は社会人として何も悪いことはない

男性の育休取得を推進していますが、現実的には取得は難しい状況があります。日本は少子高齢社会であり、男女共同参画、核家族化という、昔の価値観や仕組みを引きづると子育てがしにくい環境となっています。昔のように労働人口がたくさんいる仕組みでは成り立たなくなっています。

ただし、インフラ系やサービス業、IT系企業などを中心に8名に1人くらいの取得実績が出てきていることは良いことで、クリエイティブな仕事や、機械や別人員に代替可能な仕事などから、ライフスタイルに合わせて家庭を重んじたライフワークバランスも選択しやすい社会に向かうことが期待されます。(働きたい人は働くということも自由な形で)

まず、育休を取らせない職場とは、休みを取ることにも批判的な職場が多いです。これは、過度にマンパワーや従業員の献身性に依存してしまっている可能性が高く、本来は雇用主やマネージャーに向くべき言及が、押さえつけられ慢性化して矛先が休む人に向くという状態です。

大人になると「社会人」という言葉で人を判断するようになりますが、「社会人」とは家庭という社会の一員でもあり、友人関係という社会の一員でもあるわけです。

雇用という軸と、子育てという軸は縦割りで別で考えられがちですが、この別になっている仕組みを上手に活用していくことも一つの手です。

会社で働くことがすべてではないです。職場は自分の意志で休むこともできれば辞めることもできる「自由のきく社会」です。家庭は、よっぽどのことがない限り「一生をともにする社会」です。一生を共にする社会の方を優先することは何も悪いことはないと思います。